地震が発生すると、震源からは揺れが波となって地面を伝わっていきます(地震波)。地震波にはP波(Primary「最初の」の頭文字)とS波(Secondary「二番目の」の頭文字)があり、P波の方がS波より速く伝わる性質があります。一方、強い揺れによる被害をもたらすのは主に後から伝わってくるS波です。このため、地震波の伝わる速度の差を利用して、先に伝わるP波を検知した段階でS波が伝わってくる前に危険が迫っていることを知らせることが可能になります。
緊急地震速報には、全国約690箇所の気象庁の地震計・震度計に加え、国立研究開発法人 防災科学技術研究所の地震観測網(全国約970箇所)を利用しています。多くの観測点のデータを活用することで、地震が起きたことを素早くとらえることができます。
緊急地震速報では、少ない観測点のデータから震源やマグニチュードを迅速かつ精度良く推定する必要があります。これは、コンピュータの性能の向上により瞬時に計算が出来るようになったことの他、1観測点のP波の観測データから震源やマグニチュードを推定する手法などを活用することで可能となりました。
緊急地震速報には、大きく分けて「警報」と「予報」の2種類があります。また、「警報」の中でも予想震度が大きいものを「特別警報」に位置付けています。
一般の皆様に伝えられる緊急地震速報(警報)の発表条件は、2点以上の地震観測点で地震波が観測され、最大震度が5弱以上と予想された場合です。
2点以上の地震観測点で地震波が観測された場合とした理由は、地震計のすぐ近くへの落雷等による誤報を避けるためです。
最大震度5弱以上が予想された場合とした理由は、震度5弱以上になると顕著な被害が生じ始めるため、事前に身構える必要があるためです。
発表する内容は、地震が発生した場所や、震度4以上の揺れが予想された地域名称などです。
具体的な予測震度の値は、±1程度の誤差を伴うものであること、及び、できるだけ続報は避けたいことから発表せず、「強い揺れ」と表現することとしました。震度4以上と予想された地域まで含めて発表するのは、震度を予想する際の誤差のため実際には5弱である可能性があることと、震源域の断層運動の進行により、しばらく後に5弱となる可能性があるというふたつの理由によります。
猶予時間については、気象庁から発表する対象地域の最小単位が、都道府県を3~4つに分割した程度の広がりを持ち、その中でも場所によってかなり異なるものであるため、発表いたしません。
また、緊急地震速報(警報)における続報の発表は、次の通りです。
【緊急地震速報(警報)で続報を発表する場合】
・緊急地震速報を発表した後の解析により、震度3以下と予想されていた地域が震度5弱以上と予想された場合に、続報を発表する。
・続報では、新たに震度5弱以上が予想された地域及び新たに震度4が予想された地域を発表する。
・落雷等の地震以外の現象を地震と誤認して発信された緊急地震速報(誤報)のみ取り消すこととし、例えば震度5弱と予想していた地域が震度3以下との予想となった場合などは取り消さない。
気象庁では平成25年8月30日から「特別警報」の運用を開始しました。緊急地震速報(警報)のうち、震度6弱以上が予想される場合を特別警報(地震動特別警報)に位置付けます。
ただし、特別警報の対象となる、最大震度6弱以上をもたらすような巨大な地震については、震度6弱以上の揺れが予想される地域を予測する技術は、現状では即時性・正確性に改善の余地があること、及び特別警報と通常の警報を一般の皆様に対してごく短時間に区別して伝えることが難しいことなどから、緊急地震速報(警報)においては、特別警報を通常の警報と区別せず発表します。
●緊急地震速報の技術的限界●
緊急地震速報は、地震が発生してから、その揺れを検知し、解析して発表する情報です。一般に、緊急地震速報を発表してから強い揺れが到達するまでの時間は、数秒から長くても数十秒程度と極めて短く、場合によっては緊急地震速報が強い揺れの到達に間に合わないことがあります
解析や伝達に一定の時間(数秒程度)がかかるため、内陸の浅い場所で地震が発生した場合などにおいて、震源に近い場所への緊急地震速報の提供が強い揺れの到達に原理的に間に合いません。
少ない観測点での短時間の観測データから地震の規模や震源を推定し、各地の震度等を予想するため、予想震度は±1階級程度の誤差を伴うなど、精度が十分でない場合があります。また、予想の誤差により、緊急地震速報(警報/予報)の発表基準を満たさず、緊急地震速報(警報/予報)が発表できない場合があります。
地震観測網から比較的遠い場所(100㎞程度以遠)で発生する地震では、震源やマグニチュードの推定値の誤差が大きくなる可能性があります。
深発地震(深さ100㎞程度より深い場所で発生する地震)では、沈み込むプレートに沿って地震波が伝わりやすいという性質が顕著に現れるので、震源の直上より震源から離れた場所で揺れが大きくなることがあります(異常震域)。
また、現在、震度の推定に用いている経験式を深発地震に適用すると、実際よりも大きく計算されるなどの問題もあり、深発地震においては、震源とマグニチュードから震度を予測する従来の手法では正確な震度の推定は困難です。
なお、1あるいは2観測点のデータを使っている段階では、深発地震であっても常に震源の深さを10㎞に仮定して震度を推定するので、この場合も震度の推定に大きな誤差が発生することがあります。
マグニチュードが大きくなるほど、地震断層面におけるずれ破壊の開始から終了までの時間が長くなります。およその目安として、マグニチュード6クラスでは約10秒、マグニチュード8クラスでは約100秒です(「地震の事典」(宇津、2001)による)。
このため、一般的にマグニチュードを精度良く推定するためには、マグニチュードが大きな地震ほど長い時間が必要となります。
緊急地震速報は一刻を争う情報であり、マグニチュードが大きな地震では、地震断層面の破壊がまだ続いている中で緊急地震速報を発表することになります。緊急地震速報では地震断層面の破壊開始の初期段階で得られるデータから精度よくマグニチュードを求めるための推定式を用いていますが、その推定精度には限界があり、マグニチュードが大きな地震ほど、誤差が大きくなる可能性があります。
複数の地震が時間的・距離的に近接して発生した場合に、別々の地震と認識できず、規模の大きな1つの地震が発生したと認識するなどして、的確な緊急地震速報を発表できないことがあります。(予想震度の誤差が大きくなることや、予想震度が大きな緊急地震速報を遅れて発表することがあります。)
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